診療科目 耳鼻咽喉科
胃酸が逆流して食道の入口や喉頭の粘膜を障害して、のど違和感、声がれなどを生じる病気です。
疾患原因
・食道から胃に移行する部分は、括約筋の働きで食べ物が通るとき以外は閉じていて、胃酸の逆流を防いでいます。
・この機能が老化や手術などのために衰えてしまうと胃酸や胃の内容物の食道への逆流がおこります。
・健常な人では、食道の蠕動運動によってこの逆流物を押し戻すことができますが、これが正常に働かなくなると、強い酸性の胃液に食道粘膜が長時間さらされることになります。
・胃とは異なり食道には粘液がないため酸に弱く、粘膜に炎症が生じてただれた状態になります。これが逆流性食道炎です。
症状解説
・逆流性食道炎の代表的な症状は胸やけです。
・これは胸の中心部や胸骨の裏側に感じられる熱く、焼けるような感じを訴えるものですが、人によっては酸っぱい水や苦い水がのどまであがってくると訴える人もいます。
・その他に、胸のあたりがしみる食べ物がつかえる、飲み込みにくい、げっぷとともに胃酸が逆流する、横になると症状が出やすいなどと訴える人もいます。
・時にのどの痛みやつっかえる感じ、嗄声(声がれ)、胸痛、喘患様の咳などの症状などもみられます。
・逆流性食道炎を疑った場合は内視鏡検査を行います。食道の入口である、下咽頭の粘膜や、発声に関係した喉頭の状態を確認します。
・内視鏡検査は45度の硬性内視鏡を口から入れる場合と、喉頭ファイバーを鼻から入れる方法があります。
・内視鏡により下咽頭粘膜のびらんや浮腫などが見られたり、喉頭の披裂軟骨部に肉芽腫が認められることがあります。
・食道にも糜爛や潰瘍が認められることもあります。時に悪性腫瘍を伴うことがあるので注意が必要です。
・女性では鉄欠乏性貧血、男性では喫煙、飲酒が多い人は要注意です。
・そのほかの検査方法としては、バリウムなどの造影剤を飲んで体位変換などで胃の中の造影剤が食道に逆流するかをみる検査や、ペーハーモニターといわれる器械を使って食道への胃液の逆流を調べる検査などがあります。
治療法と注意点
・脂肪の多い食物は、胃からの排出が遅れるので控えめにします。
・胃液の分泌をうながすようなアルコール、コーヒー、香辛料等の刺激物、酢っぱいものなどのとりすぎにも注意が必要です。
・たばこも同様に胃酸の分泌を増やすといわれていますので、できるだけ控えてください。
・過食により胃酸も大量に分泌されますので、暴飲暴食はつつしみ、腹八分目を目安とし、肥満や便秘を解消するようにして下さい。
・間食も食べるたびに胃液が分泌されるのでさけてください。食後はすぐに横にならないようにし、寝る前の最低二時間は食べ物を食べないようにしましょう。
・また、寝る時には右を下にするか、上半身を少し高くして横になるようにしましょう。
・ベルト、帯、ガードルなどでお腹を締め付け腹圧を上昇させるような服装はやめ、前かがみの作業も胃液の食道への逆流をおこしやすいのでできるだけさけるようにして下さい。
・薬物治療の基本は酸分泌抑制剤と消化管運動賦括剤です。
・酸分泌抑制剤で最も効果的と言われているのはプロトンポンプ阻害剤(PPI)です。
・PPIは胃酸を分泌する胃粘膜壁細胞の段階でブロックするので、極めて強力な酸分泌抑制作用を有し、胸やけなどの症状が速やかに回復します。
・消化管運動賦括剤は食道や胃の運動を調節する薬剤です。単独では効果は充分ではありませんが、酸分泌抑制剤の補助的な薬として用いられます。
関連疾患(細目)
咽頭喉頭神経症
喉頭肉芽腫
胃・十二指腸潰瘍