診療科目 耳鼻咽喉科
・耳管は鼻咽腔(鼻の奥)と中耳腔をつないでいる管で、大気と中耳の圧を同じにし、中耳腔の換気をする働きがあります。
・通常は閉じていますが、嚥下をするときに耳管は開きます。
・耳管開放症とは、この耳管が開きっぱなしになった状態で、耳閉感(耳が詰まる感じ)や、自声強聴(自分の声が大きく聞こえる)などの症状が出ます。
・時にめまいや難聴が起こることもあります。
疾患原因
・この病気は若い女性と初老の男性に多く、疲れや睡眠不足の状態が続いたり、急に体重が減少したときに起こりやすくなります。
・これは耳管周囲の組織が萎縮したり、耳管内腔の潤いがなくなった時に発症するといわれています。
・したがって、頭を下にしたりお風呂に入ると一時的に耳閉感が軽快しますが、ストレスや下半身のむくみ、妊娠などによって悪化します。
症状解説
・耳管開放症の診断法はいくつかありますが、簡便な方法としては、鼻をつまんで嚥下をすることにより鼓膜が動くのを確認する方法があります(トインビー法)。
・鼓膜所見や聴力検査、X線検査では異常を示すことが少ないので、精神的なものとか、内耳が原因の感音難聴と間違われることがあります。
・治療法は症状に応じていくつかを選択します。
・症状の軽い患者さんには漢方薬などの薬物療法をします。
・心身の状態を整え、体液のかたよりを防ぎ、粘膜に潤いを戻す作用のある、加味帰脾湯、柴苓湯や体力を増強する補中益気湯、あるいは消炎酵素剤などの内服とネブライザーなどの吸入、加湿療法です。
・約50%の人がこの治療法で症状が軽くなります。
・数週間、このような治療を行っても効果がない場合は、耳管内腔に薬物を直接注入して、開放した耳管を狭くする治療を行います(耳管注入療法)。
・効果は数週間持続し、2、3回の注入で症状がなくなる人が90%くらいです。
・さらにそれでも症状が持続する場合は、外科的方法をとります。
・耳管咽頭孔(鼻の奥の耳管の入り口)周囲に内視鏡で見ながら、自分の脂肪や軟骨、人工コラーゲンを注射器で注入して、耳管を物理的に狭くする方法や、耳管鼓室孔(耳管の中耳腔側の入り口)の内腔に鼓膜を切開して、脂肪や軟骨をつめたり、耳管ピンという、シリコン製の栓をしたりする方法があります。
・外科的手術は、注入によるショック症状や鼓膜穿孔残存などの合併症も時に見られるので、適応は重症例に限られます。
治療法と注意点
関連疾患(細目)
耳管機能不全